103万円の壁だけじゃない!〜知っておくべき年収の壁〜

(本記事は2024年11月現在の法律に基づいています。)

大学生でバイトをしている方やパートタイムで働いている方、あるいはそのご両親/配偶者にとってどこまで年収を増やして良いのか?というのは一つの関心事だと思います。

実際、年収の壁を超えてしまうだけで今まで必要のなかった所得税を納めなければならなくなったり、ご両親や配偶者の税負担を増やしてしまう可能性があるなど様々な問題が生じる可能性があります。

しかも年収の壁は「①所得税などの税金」と「②社会保険料」という2つの側面に関係しますので、少しややこしい部分もあります。

そこで、本記事では知っておくべき年収の壁について、簡単にまとめていきたいと思います。

扶養/被扶養者について

本題に入る前に、扶養/被扶養者という用語について簡単に記載します。

  • 扶養とは
    • 自身の収入で生活していくことができない家族・親族に対して経済的な援助を行い養うこと。また、これを行なっている人を扶養者といます。
  • 被扶養者とは
    • 扶養者の経済的な援助によって養われている人を指します。

被扶養者になることによって、その扶養者は扶養控除(扶養者が支払う所得税等の控除)が受けられるようになります。また、扶養者が社会保険に加入している場合には被扶養者の社会保険料が免除されることになります。

年収の壁とその影響一覧(概要)

冒頭でもお伝えした通り、年収の壁には、「①所得税などの税金」と「②社会保険料」という2つの側面があります。

そして、扶養者・被扶養者についても別々の影響が発生しますので、まずは各壁を超えてしまった場合の影響を簡単に整理したいと思います。

詳細については後述しますので、是非ご一読ください。

年収の壁扶養者の影響被扶養者の影響
103万円
(①所得税などの税金)
税負担が増加新たに税負担が発生
106万円
(②社会保険料)
新たに社会保険料負担が発生する可能性
(勤務先や勤務形態による)
130万円
(②社会保険料)
無条件で社会保険料負担が発生(特例措置有)
150万円/201万円
(①所得税などの税金)
税負担が増加

年収の壁詳細

103万円の壁(①所得税などの税金)

103万円の壁は所得税などの税金に関する壁であり、これを超えると新たに所得税が課されたり扶養者の税負担が増加したりします。

扶養者の影響と扶養者の影響に分けて確認してみましょう。

  • 扶養者の影響
    • 被扶養者(配偶者以外)が103万円の壁を超えてしまうと扶養から外れることになるため扶養控除が使えなくなり、結果として扶養者の税負担が増加することになります。
    • 扶養控除は以下の通りであるため、例えば大学生の子供がアルバイトで103万円の壁を超えた際の影響は特に大きくなります。
区分控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満)38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満)63万円
老人扶養親族
(70歳以上)
同居以外48万円
同居58万円
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」

なお、配偶者が103万円の壁を超えてしまうと配偶者控除が使えなくなりますが、その代わり配偶者特別控除が使えるようになるため、すぐに税負担が増加するわけではなく、配偶者の収入の増加に伴い税負担が徐々に増加して行くことになります。

配偶者控除と配偶者特別控除の控除額についても、以下にまとめておきます。

※以下の表では年収ではなく、所得で記載されている点にご注意ください

(配偶者控除の基準48万円=103万円ー55万円(収入が103万円の場合の給与所得控除額))

配偶者控除(配偶者の年収が103万円(所得が48万円)以下の場合)

控除対象配偶者区分控除を受ける納税者本人(扶養者)の合計所得金額
900万円以下900万円超 950万円以下950万円超 1,000万円以下
一般の控除対象配偶者38万円26万円13万円
老人控除対象配偶者48万円32万円16万円
出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」

配偶者特別控除(配偶者の年収が103万円(所得が48万円)超の場合)

配偶者の合計所得金額控除を受ける納税者本人(扶養者)の合計所得金額
900万円以下900万円超 950万円以下950万円超 1,000万円以下
48万円超 95万円以下38万円26万円13万円
95万円超 100万円以下36万円24万円12万円
100万円超 105万円以下31万円21万円11万円
105万円超 110万円以下26万円18万円9万円
110万円超 115万円以下21万円14万円7万円
115万円超 120万円以下16万円11万円6万円
120万円超 125万円以下11万円8万円4万円
125万円超 130万円以下6万円4万円2万円
130万円超 133万円以下3万円2万円1万円
出典:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
  • 被扶養者の影響
    • 103万円の壁を超えてしまうと所得税が課されることになるため、本人にも税負担が発生することになります。

106万円の壁(②社会保険料)

(こちらは、2024年11月現在で政府が撤廃に向けて調整に入っている壁になります。進捗があり次第別途情報を整理します)

106万円の壁は社会保険料に関する壁であり、被扶養者に関係する壁になります。

この壁を超えると、勤務先や勤務形態等の条件次第で親や配偶者の扶養から外れ、新たに社会保険(健康保険と厚生年金保険)への加入義務が生じ、保険料を支払う必要が出てきます。

具体的的には以下の条件を満たす場合は、社会保険の加入義務が生じます。

  1. フルタイム労働者・正社員
  2. 1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数がフルタイム労働者の3/4以上
  3. 以下の全ての条件を満たす場合
    1. 従業員数が51人以上の企業に勤務
    2. 週の所定労働時間が20時間以上
    3. 所定内賃金が月額8.8万円以上(年換算で約106万円)
    4. 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
    5. 学生ではない

出典:厚生労働省、日本年金機構「社会保険適用拡大ガイドブック」

106万円の壁とは上記の青ハイライトの箇所に由来しており、仮に106万円を超えたとしても、現状では他の要件を満たしていない場合は、引き続き社会保険への加入義務は生じないことになります。

130万円の壁(②社会保険料)

106万円の壁では、仮に年収が106万円を超えたとしても他の条件次第では社会保険の加入義務が生じない場合がありました。

しかし、年収が130万円を超えた場合(130万円の壁を超えた場合)は基本的に社会保険の加入義務が必須となります。

ただし、厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ」における「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」によって、

"パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組み"

が運用されているため、場合によっては社会保険に加入しなくて済む場合もあります。

出典:厚生労働省「パート・アルバイトで働く「130万円の壁」でお困りの皆さまへ」

150万円/201万円の壁(①所得税などの税金)

ここで、改めて103万円の壁でお示しした配偶者特別控除の表を再掲します。

配偶者の合計所得金額控除を受ける納税者本人(扶養者)の合計所得金額
900万円以下900万円超 950万円以下950万円超 1,000万円以下
48万円超 95万円以下38万円26万円13万円
95万円超 100万円以下36万円24万円12万円
100万円超 105万円以下31万円21万円11万円
105万円超 110万円以下26万円18万円9万円
110万円超 115万円以下21万円14万円7万円
115万円超 120万円以下16万円11万円6万円
120万円超 125万円以下11万円8万円4万円
125万円超 130万円以下6万円4万円2万円
130万円超 133万円以下3万円2万円1万円

出典:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」

表中で赤字で示した二つの数値から以下のことがわかります。

  1. 配偶者特別控除が満額受けられる配偶者の合計所得金額は95万円(以降減少して行く)
  2. 配偶者の合計所得金額が133万円を超えると配偶者特別控除が全く受けられなくなる

年収が150万円の場合の給与所得控除額は55万円なので、配偶者の合計所得金額95万円150万円ー55万円)を境に配偶者特別控除の額が減少して行くため「150万円の壁」と言われています。

同様に、年収が201万円の場合給与所得控除額は68万円なので、配偶者の合計所得金額133万円201万円ー68万円)を境に配偶者特別控除が受けられなくなるため、「201万円の壁」と言われています。

参考までに、給与所得と給与所得控除の関係を以下に示しておきます。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで55万円
1,625,001円から 1,800,000円まで収入金額×40%-10万円
1,800,001円から 3,600,000円まで収入金額×30%+8万円
3,600,001円から 6,600,000円まで収入金額×20%+44万円
6,600,001円から 8,500,000円まで収入金額×10%+110円
8,500,001円以上195万円(上限)
国税庁「No.1410 給与所得控除」

※収入金額が201万円の場合:201万円×30%+8万円≒68万円

最後までお読みいただきありがとうございました。

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