2026.08.21
【106万円の壁】医師家庭の配偶者の働き方はどのように考えるべきか。注意点とともに解説
配偶者が扶養内で働いている医師家庭も多いと思います。そうした家庭では、どこまで働くかを決める基準として「106万円の壁」という言葉をよく耳にしてきたのではないでしょうか。
この壁が2026年10月に撤廃される予定です。基準がなくなるので働きやすくなると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には判断の中心が週の労働時間と勤め先の規模に移るだけです。
しかも扶養内で働けるかどうかの判定は、配偶者の勤務先ごとに行われます。医局人事で転居すれば配偶者も勤め先を変えることも少なくありません。その場合は、転居のたびに条件を確認し直すことになります。
そこで本記事では、配偶者が扶養内で働いている医師家庭を対象に、2026年10月以降の働き方をどう考えればよいかを整理します。
※本記事は2026年8月時点の制度に基づき執筆しています。
2026年10月、「106万円の壁」がなくなる
社会保険への加入判定条件は、2026年9月までは次の5つです。(社会保険に加入すると、配偶者は扶養から外れることになります)
- 週20時間以上働いていること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 従業員51人以上の企業に勤めていること
- 学生でないこと
- 雇用見込みが2か月を超えること
このうち2.がいわゆる「106万円の壁」で、2026年10月に撤廃される予定です。
背景にあるのは全国的な最低賃金の引き上げであり、1.を満たせば2.の賃金要件も自然と満たすケースが大半になったため、その役割が薄れてきたことが理由とされています。
学生ではなく、2か月を超えて働く見込みがあるなら、4.と5.は満たします。つまり、2026年10月以降に実際に分かれ目になるのは、1.の週20時間と3.の企業規模の2つです。
なお、3.の企業規模は段階的に引き下げられ、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上と基準が引き下げられ、2035年10月には勤務先の規模を問わなくなります。

このように10年ほどかけて、勤め先の規模は社会保険に加入するかどうかの判断材料から外れていきます。なお、いま条件を満たしていない企業でも、その勤め先の従業員の2分の1以上が同意すれば、短時間で働く方が社会保険に加入することはできます。
次章では、扶養内に留まる場合に何に注意すればよいかを見ていきます。
扶養内に留めるなら、「週20時間未満」と「年収130万円」に注意
配偶者が引き続き扶養内で働く場合は、労働時間を週20時間未満に抑える必要がありますが、この状態で年収が130万円を超えてしまった場合にも、実は扶養から外れることになります。この場合、配偶者は勤め先の社会保険には加入しないまま扶養から外れるので、国民年金と国民健康保険の保険料を全額負担することになります。
このパターンはかなり損をしてしまいます。勤め先の社会保険であれば保険料の半分は勤め先が負担しますが、国民年金と国民健康保険にその仕組みはありません。保険料を全額払いながら、勤め先の社会保険に入っていれば得られたはずの年金の上乗せも受けられなくなるので、注意したいところです。
なお、配偶者が扶養から外れるかどうかの判定には、年収130万円のほかに配偶者の年収が世帯主の年収の2分の1未満であることという条件もあります。ただし年収が高い医師の場合、この2分の1という条件が問題になることはまずありません。(配偶者の年収が2分の1を超える場合、そもそも扶養内で働けるような年収ではないため)
もうひとつ気をつけたいのが、週20時間未満のつもりでも、繁忙期などに実際の労働時間が20時間を超えることがあるということです。基準となるのは雇用契約書に定められた所定労働時間ですが、週20時間以上で働く状況が2か月を超えて続くと、社会保険の加入対象となることがあります。
次章では、週20時間を超えて働く場合に手取りがどう動くのかを見ていきます。
週20時間を超えると、手取りが一度下がる
配偶者が週20時間以上働いて社会保険に加入すると、扶養から外れることになります。この場合、手取りが一時的に減少する可能性がありますが、次のメリットもあります。
- 将来の年金が上乗せされる
- 傷病手当金等の保障が受けられる
こうしたメリットはあるものの、目先の手取りが減少することに抵抗を感じる方も多いはずです。
そこで、東京23区在住・45歳、時給1,226円の方を想定して労働時間別に年収と手取りを試算してみます。
結果は以下のとおりです。

週19時間なら年収121.5万円で手取りは120.5万円、週20時間にすると年収は127.9万円に増えますが、手取りは108.0万円まで下がります。つまり、年収が6.4万円増えて、手取りは約12.5万円減るという逆転が起きます。この原因となっているのが、社会保険料と雇用保険料の本人負担です。
一方、週23時間まで働けば年収147.0万円・手取り122.5万円となり、手取りが週19時間のときを上回ります。必要以上に時間を抑えるのではなく、勤め先の条件と家庭の状況を踏まえて決めたいところです。
判定は配偶者の勤め先ごと。転居のたびにやり直しになる
社会保険に加入するか否かの分かれ目になる2つの条件は、どちらも配偶者の勤め先で決まります。
医局人事で転居することになれば、配偶者も勤め先を変えることになる可能性があります。そのたびに、社会保険に加入するかどうかの確認は最初からやり直しです。
転居先で、配偶者が同じ条件の仕事に就けるとは限りません。規模の小さい勤め先しかない地域であれば、週20時間以上働いても社会保険に加入できないという状態が起こり得ます。
それでも年収が130万円を超えれば、配偶者は扶養から外れます。 「週20時間を超えたら社会保険に加入する」という前提が、そこでは成り立ちません。
なお企業規模の条件は年々緩くなり、社会保険の対象になる勤め先は広がっていきます。配偶者が勤め先を変えるたびに条件も変わるので、数年前に確認した内容がそのまま使えるとは限らないということを意識しつつ確認することが大切です。
働き方をご夫婦で一緒に考えるきっかけに
2026年10月以降に確認したいのは、主に次の2つです。
- 配偶者の勤め先の従業員数と、雇用契約書の所定労働時間
- 扶養内に留めるのか、越えて働くのか
- 留めるなら、週20時間未満に加えて年収130万円にも注意が要ります。越えるなら、手取りが増加に転じる水準まで働けるかどうかが判断の中心になります。
なお、収入を増やす方法は労働時間だけではありません。時給の高い勤め先に移る、資格を取って時給を上げるという選択肢もあります。
壁がひとつなくなっても、判断が要らなくなるわけではありません。残った条件は、配偶者が勤め先を変えるたびに確認し直すことになります。
今回の改正をきっかけに、働き方をご夫婦で一緒に考えてみてはいかがでしょうか。